置き去りの拉致問題〜一刻も早い経済制裁を
 6カ国協議が5週間ぶりに再開。が、もはや拉致問題はおろか核問題も進展が望めない状況。一体何のために、誰のためにやってるんでしょうか。

 北朝鮮はアメリカとの攻防に必死で、拉致問題なんか全くスルー。北朝鮮に拉致問題を考えさせるには、当事国である日本がムチを振るって北朝鮮をびびらせるしかないと思います。
 家族会や救う会だけでなく多くの日本国民もそれにとっくに気づいていて、経済制裁発動をやるべきだと言っているのに、日本政府が動く気配は全くありません。

 小泉首相は「郵政民営化に賛成か反対か、国民に聞いてみたいと思って衆議院を解散した」と言いました。今回の選挙で自民党は大勝しました。つまり「国民は郵政民営化にYESと答えた」わけですな。
 その表現を借りるなら、選挙なんかやらずともずっと以前から「国民は経済制裁にYESと答えてる」んですけどね。何でそれはスルーなんですか?小泉くん!

 8月、6カ国協議が休会になる前、非常に短い時間ですが日朝間で協議が行われました。日本は拉致問題を取り上げました。
 それに関して、救う会の西岡力さんの話。

・「正論」10月号<拉致と核−失望の三年間と情勢悪化で問われる日本外交の覚悟>より
 協議後、ご家族に対する政府の説明が行われた際、私は佐々江賢一郎・アジア大洋州局長に、「このままでは厳しい対応を取らざるを得ない」という政府の方針を北朝鮮に伝えたかどうか尋ねました。「厳しい対応」とは、北朝鮮がめぐみさんのものと称して出してきた遺骨が偽者だったことが判明した昨年十二月二十四日、細田長官が経済制裁を念頭に公式に発言したことです。しかし、佐々江局長の回答は、「日本政府は何回も言っているから北朝鮮は先刻承知しているし、はじめて二国間協議ができたのだから、この対話を継続させたかったから言わなかった」というものでした。
 小泉政権は明らかに、昨年十二月に表明した「このままでは厳しい対応をとらざるを得ない」という方針をトーンダウンさせています。北朝鮮の核問題を優先させ国連安保理事会に諮ったうえで国際制裁をする、それまでは拉致問題で日本は突出したことはしないという姿勢にこの半年間で転じたということです。これはしかし大変危険なことで、北朝鮮が、日本は拉致問題をそれほど重要視はしていないので単独制裁はしないと考えていると受け止められる可能性があります。

 経済制裁は単に北朝鮮を経済的に追いつめることだけが目的ではありません。
 国家の意思を示すこと、すなわち「日本は政府も国民も拉致問題を許さない。解決するまでとことんやる」と北朝鮮及び国際社会に対して示すこと、こちらの方が主たる目的と言っても過言ではないと思います。

 拉致問題は確かに日朝二国間の問題かもしれません。が、世界にある国は日朝だけではありません。多くの国がこの二国の言動を見ているのです。そう、「日本は拉致問題をそれほど重要視はしていないので単独制裁はしないんだな」と受け止めてしまう可能性があるのは北朝鮮だけではないのです。
 逆に言えば、日本が強い姿勢を示すことで「日本政府は拉致問題を解決しようと頑張っている」と多くの国が受け止めるでしょう。そのことがアメリカ以外の第三国の協力や連携を呼び、進展につながることは十分あると思います。

★☆救う会全国協議会ニュース★☆(2005.09.13)
■当選者の3分の2以上が早期経済制裁に賛成

 家族会・救う会では、総選挙全立候補者へのアンケート調査を行なったが、投票結果を受けて、当選者の集計を改めて行い、本9月13日記者会見で公表した。その結果、当選者の3分の2以上に当たる66.9%が経済制裁の早期発動に賛成していることが分かった。民意の反映である新当選者の意思を重く受け止め、政府が制裁を決断することが期待される。

 なお、各当選者のアンケート結果は、救う会ホームページに掲載されている。

 前に片山さつきさんが「ザ・ワイド」に生出演した時のこと。拉致問題について振られたものの、「6者協議の中でやっていく」「いろんな配慮をして全体の中で解決していく」などの抽象的な回答しかせず、私は非常に失望したものでした。
 救う会アンケートに対して、片山さんはこういう回答を寄せています。

制裁自体を否定するものではないが、その発動に際しては、被害者の安全性等について、十分配慮すべきであり、必ずしも「早期」にこだわるべきではないと考える。拉致被害者の方々の早期安全救出のため、私も微力を尽くさせていただきます。

 「被害者の安全性等配慮すべき」といった趣旨のことは片山さんだけでなくいろんな人が言ってますが、私はこれは制裁発動を避けるための逃げ口上にすぎないのではないかと思います。
 なぜなら、当事者であるご家族皆さんが「リスクがないとは言えないが、それでも早期に制裁発動をしてほしい」と覚悟をもって主張されているからです。

 ご家族皆さんは自分の息子・娘が北朝鮮に拉致されたらしいとわかってから、北朝鮮がどういう国なのかというのを否応なく「勉強」する羽目になりました。ですから「北朝鮮はこういう状況になったらどう出るか」といった行動パターンも、そのへんの議員やコメンテーターより何十倍もよく理解されていると思います。

 北朝鮮に限らずどこの国でもそうですが、もし日本に対して折れてくることがあるとしたら、それはその国が何らかの面で困っていて日本の助けが必要になった時です。
 北朝鮮が日本に対して助けを求めることがあるとしたら、それは経済的に困窮していてカネやモノがほしい時に他なりません(3年前に拉致を認めたのもそういう理由からでした)。
 だから、北朝鮮の目を拉致問題に向けさせるための手段は一つ。北朝鮮を経済的に困らせて、「拉致問題を交渉材料にせざるをえない」と思わせること。

 そこで出てくるのが「日本が単独で経済制裁やっても効果無し」論です。まだまだ根強くあるみたいですね。が、これを唱える人って、北朝鮮の経済規模を日本のそれと同じように考えてませんか?
 北朝鮮は小さな国です。重村智計教授によれば、北朝鮮の予算は2600億円で日本の自治体並みだそうです。
 私は経済のことは疎いですが、たとえば年収1000万円の人が10万円没収されてもさほど痛くはないけど、年収100万円の人が10万円没収されたらめちゃくちゃ痛いということぐらいは理解できます。

 まず万景峰号を止めることです。logさんも書かれているように、万景峰号を止めるだけでも十分効果があります。在日朝鮮人から得ている年間何十億ものカネが北朝鮮に入らなくなるからです。

 そこで出てくるのが「万景峰号が止まったら向こうに親族がいる在日朝鮮人が困るから可哀想」論です。これも違います。むしろ逆です。

救う会サイト掲載・李英和氏の提言より
2.万景峰号入港禁止は親族訪問の負担軽減と利便性向上を実現する

(前略)
 万景峰号が「唯一の親族訪問のルート」なっているのは、日本政府ではなく、北朝鮮政府と朝鮮総連による措置のせいである。親族訪問に使えるルートは他にもある。北京経由での飛行機便ルートである。朝鮮総連の幹部や商工人は主に航空機ルートで北朝鮮に入国している。実際、有力なコネを持つ一部の在日朝鮮人は、親族訪問の際、復路に飛行機を使う特権を認められている。これが「特権」となるのは、航空機ルートは費用が妥当で、なおかつ快適性と利便性が高いからである。したがって親族訪問の在日朝鮮人の大半が飛行機の利用を望んでいる。しかし北朝鮮政府と朝鮮総連はこれを認めない原則を今日まで固守している。
 その理由は二つに大別できる。ひとつは、密室状態の万景峰号以外では親族訪問の在日朝鮮人を完全統制できないこと。航空便では外国人や他団体の在日韓国・朝鮮人との接触を完全に禁止するのが不可能なせいである。同時に、往路と復路の両方で北京その他の諸外国でトランジットの必要性が生じ、この場合も緘口令や禁足措置などの統制が利かないせいである。もうひとつの理由は、航空便ルートを許可すれば、万景峰号の運航が経済的にも政治的にも困難になること。親族訪問業務を独占することではじめて、船便としては高額の料金設定が可能となる。また、高収益と人道事業の看板を利用して貨物輸送や船内指導などの政治工作活動を実施する定期運航が保障される。
 (後略)

 また、ほとんどが困った人たちのもとには届かず党や軍に横取りされているであろう日本のNGOの人道支援、この多くは万景峰号を使って行われています。万景峰号は支援物資の送料が無料だからです。万景峰号がストップすれば、これらも同時にストップすることができます。

・「正論」10月号<拉致と核−失望の三年間と情勢悪化で問われる日本外交の覚悟>より
櫻井よしこ
 あり得ないとは思いますが、六カ国協議が再開されて順調に話し合いが進み、北朝鮮がアメリカも納得する形で核を放棄するという合意に達したとします。そうなった場合、アメリカは援助をすると表明していますね。韓国はもともと援助をしたくてウズウズしている。ではその援助の資金はどこが出すのか。日本に相当な分担が求められることは明らかです。ですから今のうちに経済制裁の実施を表明して、北朝鮮の核放棄に対する見返り援助も日本は絶対に負担しないと主張しておく必要があります。そうしておいてはじめて、日本が経済制裁をやめ、援助も分担するためには拉致問題の解決が前提だから、北朝鮮も拉致問題に真剣に向き合いなさいということになるわけでしょう。国際社会にきちんとプレゼンテーションしておく必要があると思います。

西岡力
 アメリカはすでに北朝鮮に対して経済制裁を実施しています。アメリカの国内法では、テロ国家に指定した国に世界銀行やアジア開発銀行のようにアメリカが理事として出資している国際金融機関が融資をしようとしたら、アメリカは反対しなくてはならないと定められています。北朝鮮もテロ国家に指定されていますから、この対象になっているんです。(中略)だから、北朝鮮はテロ国家指定を解除してくれとアメリカと交渉しようとする。しかも、アメリカが北朝鮮をテロ国家として指定している理由は、自国に対するテロではなくて、日本人拉致です。だから日本も拉致問題を理由にして経済制裁をすれば、北朝鮮が解除してくれと頼んでくるという構図の交渉になるわけで、日本にとってはカードが増えるわけです。これまでのように特権階級を潤わすだけの米支援をしなくても、めぐみさんが帰って来たら万景峰号を一年に一回は新潟に寄港させてあげますが、どうしますか、と言えばいい。

 北朝鮮は困った時しか日本と交渉しようとしません。交渉の場に引っ張り出すには北朝鮮を困らせる必要がある。困らせるには経済制裁が一番有効。
 (これが他国なら武力行使をちらつかせるという作戦もありだが、日本は憲法の制約でそれができない)

 仮に経済制裁にさほどの効果が出なかったとしても、先ほども書いたように本質は他のところにあります。
 「日本政府も国民も拉致問題にここまで怒ってるんだよ」「核問題が片づいても拉致問題が片づかない限り日本はカネは出さないよ」という国家意思を北朝鮮と国際社会に示す。これが一番重要。

・「正論」10月号<拉致と核−失望の三年間と情勢悪化で問われる日本外交の覚悟>より
横田早紀江
 本当に難しい状況ですね。でも普通に考えれば拉致問題の解決策は単純なことなのに何でこんなややこしいことになるんでしょう。めぐみは、生きているのにどんな目にあっているのか分からない、声も聞けない、手紙も出せないままで、一方でいろんな噂が入って来るたびに私たちは悩まされます。被害者の親御さんたちはみなそういう毎日を暮らしています。皆さんお年を召して、もう立ち上がれなくなった方もいます。一刻も早く取り返して会わせてあげなければ、もうこの世では会えないような状況になっています。政府には改めて真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 3年前、日朝首脳会談で金正日が拉致を認め謝罪しました。犯罪者が犯行を認めて謝罪したんです。なのに未だに解決しない。
 こんな状況があと何年続くんでしょうか。長引かせてはいけません。

 北朝鮮を動かすにはまず日本政府が真剣に動くことです。日本政府を動かすためには、私たち国民が政府に「動け」と訴えることが必要です。
 普段はこういうキャンペーンみたいなことはやらないんですが、私はいま本当に危機感を感じています。だからコピペしときます。

※小泉首相宛、はがき・メールを!
(〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 小泉純一郎殿、首相官邸のホームページ=http://www.kantei.go.jp/の右下の「ご意見募集」欄を利用)

 おまけ。
 万景峰号関連でネットを色々調べてましたら、面白いHPに行き当たりました。サヨクなシスターのHPです。

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Posted by くっくり 02:19 | 拉致問題 | comments (16) | trackback (6)