「男たちの大和/YAMATO」戦艦大和語り部インタビュー
 昭和20年4月7日、戦艦大和沈没。
 生還者の一人であり、戦艦大和語り部ネットワーク講師であり、現在公開中の映画「男たちの大和/YAMATO」では海軍式の立ち振る舞いを指導された八杉康夫さん。
 その八杉さんのインタビューが広島県の経済紙に掲載されたとのことで、読者の方が記事をメールで送って下さいました。

 こんにちは。
 いつも読ませていただいております。

 私は,広島県に住んでいるのですが,地元の経済紙「びんご経済レポート」第1577号平成18年1月10日発行の文中に次のような記事がありましたので,ご紹介しようと思い,メールさせていただきました。

 「この人に聞く」というコーナーで,インタビューを受けているのが八杉康夫さん(78歳)。
 八杉さんは,「男たちの大和/YAMATO」にて海軍式の立ち振る舞いを指導された方で,大和乗組員での生還者です。

 全文を転記します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「この人に聞く」
 八杉康夫さん 戦艦大和語り部ネットワーク講師 
 戦艦大和の意味を伝える生き証人

■昭和2年12月2日福山市生まれの78歳。
 昭和18年15歳で志願して海軍入隊。
 横須賀海軍砲術学校で測距技術を学び,20年戦艦大和の乗組員になる。
 その年の4月7日午後2時23分,戦艦大和沈没。
 3009人中の生還者276人の一人となる。
 本土決戦にそなえた訓練中,原爆救援活動で被爆。
 30年から戦艦大和の資料集めに奔走,海底の大和探索にも関わる。
 語り部として全国への講演活動を続けている。
 調律事務所と弦楽器工房を経営。

−−−−本文−−−−−−

 旧日本海軍の戦艦大和の元乗組員で重油の海から生還した八杉康夫さんが講演活動に多忙を極めている。
 昨年は戦後六十周年。
 呉市の大和ミュージアムが春に開館,百万人を超える入場で人気を集め,尾道市に実物スケールで作成した大和ロケセットを使った東映映画「男たちの大和/YAMATO」は昨年十二月十七日から公開が始まり,大ヒットの勢いで観客の心をつかんでいる。
 尾道で一般公開中の大和ロケセットもお正月に一日一万人を超える入場記録をつくり,戦争の意味を深く考える機会を提供している。
 戦後六十周年は日本の戦後教育を振り返り,今の若者に戦争体験者が平和を生み出す根本精神を伝える大きな節目ともなっている。
 映画「男たちの大和/YAMATO」でも海軍式の立ち振る舞いを指導した八杉さんは「私にとって講演は重油の海に帰る重労働。それでも私が生きた証をつかむ使命」と七十八歳の年齢を感じさせない精力的な講演を毎週こなしている。
 八杉さんに聞いた。

 ■映画ではどんな指導を・・・

 原作者の辺見じゅんさんを通じて東映から要請がありました。
 辺見さんは生還者に取材を続けておられ,ずっと以前から知り合い。
 撮影直前の現場に入ったが,もっと前から関われれば,服装など細かな点も指示できたのに少し残念。
 東映が軍隊の様式指導を受けてきたのは自衛隊,つまりアメリカ様式の色濃いものだったので指導のやり直し。
 海軍の敬礼は陸軍とも違い,狭い船の中のこと,肘を広げない。
 そんな一つ一つの行動が違いました。
 それでも役者の皆さんは短期間でよく学ばれました。

 ■映画の中で海軍精神注入棒でお尻をこっぴどく叩くシーンがありますが,八杉さんの思い出は・・・

 私は船に乗って叩かれたことはなかった。
 しかし福山から海軍を志願したとき,教育担当の上司が指導してくれました。
 「痛みを知っておけ」という優しさです。
 厳しさは優しさに裏打ちされたものでした。
 大変な人格者で,まず「自分を叩いてみろ」というのが先でした。
 「冷静なときだけ,叩いてもいい」そう教えてくれました。

 ■海軍精神の優しさとは・・・

 そりゃあ厳しかった。
 しかし船が沈むときは傾いた側のできるだけ遠くへ離れ,渦に巻き込まれたらこうしろとか,水中爆傷の怖さも教えられた。
 それは全て「死んではならぬ,生きろ」という教えだった。
 生きるために必要な厳しさがあった。

 ■大和で担当された仕事は・・・

 大和の艦橋(ブリッジ)で測距儀を担当しました。
 海面から三十m以上あり,大和の大砲を撃つ方向を決める最高頭脳部です。
 横須賀海軍砲術学校で学んだ技術を生かすには最高に名誉な持ち場でした。
 それにしても大和の設備はすごかった。
 今でいうレーダー,電波探信儀は一号三型,二号一型,二号二型の三種で対艦,対空に備えていました。
 しかし世界に目を移せば,イギリスのレーダー技術にはかなわなかった。

 ■イギリスのレーダー技術はなぜそれほど発達したのでしょうか。

 大和にレーダーが付けられる前,外国人捕虜の言葉から「ヤギ」という言葉が何度も聞かれたそうです。
 皆さんご存知の八木アンテナのヤギです。
 昭和十年代初め,日本で生まれた画期的な技術は日本で成熟することなく,外国で取り入れられました。
 特にイギリスはすぐに取り入れました。
 これはいかんと日本もレーダー開発に着手,昭和十七年末に前年既に竣工していた大和に初めて取り付けられました。
 大和のレーダーは五万mも離れた遠方の敵発見には威力を発揮したが,外国では小型化が進み,戦闘機一機一機に取り付けられていた。
 だから雲の上からでも大和を攻撃できた。
 大和が沈んだその日,雲量は十段階の八から九でした。
 こちらは雲の上のどこにいるか分からない敵。
 しかし敵には大和がレーダーにはっきり映っていた。
 大和の最期は技術の進化に目を閉じた結末だったとも思えます。

 ■このほど「戦艦大和 最後の乗組員の遺言」と題した本もワックから出版され,講演活動もますます力が入っているようですが・・・

 戦争は日本的な阿吽の呼吸では回避できない。
 外国は文化が違う。
 専守防衛を間違えてもいけない。
 一発目の攻撃は甘んじて受けるような政府高官の発言では危機管理に疑問を感じる。
 あのスイスにも軍隊はある。
 戦争そのものが被害で被害者も加害者もない。
 それを知り,平和を自分らでつくる自覚がいるのではないでしょうか
 生かされた第二の人生。
 戦争を体験した者として日本の未来のため,納得して死にたい。

−−−−−−−以上−−−−−−−−−−−−

 この「びんご経済レポート」は
 (有)備後レポート社
 尾道市新浜一丁目14−31
 0824−22−2214
 report@bingoweb.co.jp
 が発行所です。

 平和の意味を考えるための一助となれば。

 HN:へいろん でした。

 へいろんさん、レアな記事を送っていただきありがとうございました。
 「戦争は日本的な阿吽の呼吸では回避できない」「一発目の攻撃は甘んじて受けるような政府高官の発言では危機管理に疑問を感じる」「戦争そのものが被害で被害者も加害者もない」「平和を自分らでつくる自覚がいるのではないでしょうか」……
 体験に裏打ちされた重たい言葉ですね。

 「男たちの大和/YAMATO」ですが、都合がつかず、私はまだ観に行けていません。
 ネット等で聞いた話によれば、もう観客は涙の渦、エンドロールが出ても誰も席を立たない、そんな状況らしいですね。また、製作に朝日新聞やテレ朝が名を連ねているわりには、反日色は薄いとも聞きます。
 あれほど嫌いだった長渕剛も、CMで繰り返し聴くうちに嫌悪感はなくなりました(^_^;。私も早く観に行きたいです。
 (そういうわけでコメント下さる方、映画のネタバレは避けて下さいね(^^ゞ)

【今日は深夜にもう1本UP予定です】

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Posted by くっくり 19:58 | 読者様のメール | comments (13) | trackback (0)
コメント
「男たちの大和」観てきました。
戦場に臨む男達の姿に思わずジーンと来ました。そして決して日本は侵略などのために戦争したのではないということも実感できます。
が、そんな内容だったのにエンドロールで朝日新聞とテレ朝の名前を観た時はびっくりしました。まあ、テレ朝でも「テレビタックル」のような番組もありますから、部署に依るのでしょうか。
ただ、後から冷静に考えると「?」と思える台詞や場面もあり、それと朝日を結びつけて考えると「なーるほど」と思えました。
総じて私の感想は、朝日が関わったにしては非常に反日色は薄く(原作者である辺見じゅん氏の意向もあるのでしょうか?)、素直に見ることが出来た映画だと思います。
Posted by 物欲皇帝閣下 | URL | 06/01/16 21:05 | zrwE55SE

私も「男たちの大和」を観てきましたが、酔っぱらいのじじいがすべてを台無しにしてくれました。
あまりに頭にきて友人と二人で強制的に排除しましたが(^^;
Posted by k1 | URL | 06/01/16 21:38 | urfRAjoo

号泣しました・・・

が、某所で「街宣右翼っぽい臭いがする」という話を聞いてから思いおこしててみると、
描写の一部にそういう意図が隠されていたようにも思えます。
疑心暗鬼。


はたしてこれは悪意のプロパ映画なのか、
英霊に恥じない名作なのか。
くっくりさんのレビューが待ち遠しいです。
Posted by ジョルト | URL | 06/01/16 22:05 | lNSDpT9w

私は去年の暮れに観てまいりました。
エンドロールは公開されなかったシーンや沈んでいる実際の大和が映されていたので席を立つ人は出ないようなつくりになってます。
朝日が絡んでいるなと思う箇所は大和の出撃が決まったいきさつで、天皇陛下のお言葉がそのきっかけになったような流れになっていて、その部分が少し引っかかりました。名作「新幹線大爆破」を作った監督なので期待しみてきました。
良い出来だと思います。
年末のNEWS23でおすぎと筑紫の映画の評論があったのですが相変わらず筑紫は進歩が無いですなぁー。
Posted by ぱんめ | URL | 06/01/16 23:34 | kxoaqtjM

こんばんは、『男たちの大和』 素晴らしかったですよ。
英霊となられた方々は、それぞれ一人の人間として、男として、守りたいもののために戦場へ赴かれたんだという立場から撮られた作品でした。
巷には「戦争映画なんか撮ること自体がすでに戦争美化」みたいに決めつける風潮がありがちですが、この作品は違います。むしろ私は、歴とした反戦映画だと思いました。

ただ、惜しむらくは、ここまできっちりと再現しておきながら、なぜ「靖國で会おう」というセリフを入れなかったのかということ。こういう英霊の方々が、こういうシチュエーションで魂の拠り所になさったのが靖國神社なのです。戦争美化だの 侵略正当化のための装置だのと攻撃されることがいかにウソくさく、根拠にズレがあることか。それがよくわかったのじゃないかと思うと、もったいなくて仕方ありません・・・。

あまりにも出来が良かったものですから、そんな欲が出てしまいました。
あと、私もやっぱ、えぇと、そのぅ・・・う、歌がちょっと(爆
正直かなりブチ壊してくれたかなー、なんて。わはは。
Posted by まるまろ | URL | 06/01/17 00:24 | GvyPdCJ.

私も今年の映画始めに観てきました。
朝日新聞テレ朝が絡んでいる上に、以前から長渕剛が
あまり好きではないので期待せずに観たのですが、
、、、
、、、
泣きました。主義主張関係なく泣ける映画でした。

「靖國へ」って台詞、あったように思うのですが、どうも
自分で脳内補完していたような気もします(苦笑)。

あと、相当違和感だったのはやはり長渕。良い歌だとは
思いますが、なんで「Close Your Eyes」って英語の題名
なんでしょう。歌のサビもそのまんまですし。
Posted by まるる | URL | 06/01/17 01:14 | VEytSOo.

仕事が休みだった元日に見に行きました。全体的な出来としては、右にも左にも一定の配慮をしたような感じがして、中の中から上くらいかな、という感想でしたが

……ただし、劇中、3回涙を流して泣きました
Posted by まんちゅりあ | URL | 06/01/17 08:22 | Wc5/q.Mo

北海道旭川にも海軍に招集されて雪風かなにか帰還した艦に乗っていた人がいます。
その妹さんと私は知り合いで貴重な生き証人だから
「お兄さん、手記でも書かないの?」
と、聞いてみたら「大和って聞いただけで泣き出すから無理だ」といわれました。
当然映画を見に行こうと誘ったけど「とても行けない」と
断られたそうです。
どこかの団体やジャーナリストがこういった生き証人達から聞き取りをして記録を残す人いないものかなあと思います。
このままでは左翼の捏造証言だけ記録に残りそうで不安です。
Posted by tanaka | URL | 06/01/17 11:12 | hQuoXzlM

>「お兄さん、手記でも書かないの?」
ああ!私も書いていただきたいです。
小野田さんのように発言してくださる方が一人でも増えて欲しいです。
軍隊アレルギーの世代のせいで若い人たちに戦場の実態が伝わらないのはいけません。
中帰連みたいに死ぬまで嘘の証言を垂れ流すような「元軍人」の意見と戦えるように、若い人たちに理論武装をさせるべく証言を、是非。
Posted by oha | URL | 06/01/17 17:21 | /ijYGmXM

>製作に朝日新聞やテレ朝が名を連ねているわりには

私は他の機会に見ようと思います。ついこの前、主演のなんたらいう俳優が、「やっぱり戦争はだめだと思う」と、テレ朝のインタビューで締めくくっていました。紛争の懐古関連番組ではお決まりの短絡の一句ですね。まあ、例によってズタズタの編集でこうなったのだと信じたいのですが、この一言で、金払って映画館に行く気が一気に失せました。すみません、みなさん...
Posted by 未定 | URL | 06/01/17 20:38 | 2SWraslY

私は昨年の見納めがこの映画でした。
最初から、最後まで、涙・涙で、すっかり瞼が腫れてしまいました。
あの頃の視点と言うよりも、現代の視点で描かれていますが、あまり思想的ではなく、人間ドラマとして、描かれているのが、すんなりと入りやすいと思いました。
大切な人たちを守るために戦う、そしてその人たちを支える家族達。
「死んだらいかん、生きて〜」という前向きなメッセージがこの映画を好感持てるようにしたと思いました。
でも↑の人が書かれているように「靖国で会おう!」という言葉が聞かれなかったのは、朝日新聞が後援かな?とも思いましたが・・・。
多くの若い人たちに見て欲しい作品です
Posted by dekotyan | URL | 06/01/17 23:47 | KAWVyyu6

今日、観てきました。
私は泣き虫なので、割とずっと泣いてましたね。
戦闘シーンでは別に泣かなかったですが、やはり乗組員達が親しい人と別れるシーンはポロポロきます。
私も左右両方に配慮した作りだとは思いました。
ただやはり、作りが現代風だなぁと思う所も多々ありました。
あの時代を生きた人はそういう考え方をしないんじゃないかな…とか考えたもので。
私の聞き違いだったら申し訳ないんですが、中級士官クラスの人が「天皇」って呼び捨てにしてたような気がします。すごく気になって…。せめて「陛下」ではないでしょうか。
でも映画のラストシーンで考えたことは、やはり子供に近現代史をもっと教えるべきだという感想が一番でした。
良いことも悪いことも偏ることなく教え、その上で当時の兵士だけではなく、生きていた日本人すべての犠牲の上に自分達の今があるのだと、自覚して欲しいのです。

蛇足ですが、あの戦闘シーン。よく朝日が文句を言わないなと思いました。
自分達がスポンサーだと出る言葉も違うんですよね、きっと。フジがやってれば、18禁にしろとでも騒ぎそうです。
Posted by とんとん | URL | 06/01/18 01:50 | UmbNWJQs

当時の空気がわかる映画は何本か知っていますが、『軍艦武蔵』が特にオススメです。
これは純然たるドキュメンタリー作品で、大和の姉妹鑑であった武蔵の生き残りの方々へのインタビュー映像です。
レンタルビデオ店などでもなかなか発見が難しいかとは思われますが、実際の乗組員であった方々の語って下さるお話は大変貴重ですので、どこかで見かけられましたらゼヒお手にとってみてはいかがでしょうか。

『軍艦武蔵』
1992年 大映製作、監督:手塚正己です。

> tanaka様
帰還された方のお気持ち、お察し申し上げます。
上記の『武蔵』で語っておられる方々のお話から、
本当にさまざまなことを教えていただきました・・・。
よく話して下さったなぁ・・・・と、胸がいっぱいになってしまいました・・・。
Posted by まるまろ | URL | 06/01/19 00:07 | GvyPdCJ.

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